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Research

 近年、PM2.5の高濃度現象の報道などを通して、大気中に液体や固体の微小な粒子(エアロゾル粒子)が浮遊していることをご存知の方も多いと思います。エアロゾル粒子は、人間の健康に悪影響を及ぼすのに加え、太陽光を吸収・散乱したり、雲粒の生成に関与したりすることで、気候や気象、大気環境に大きな影響を及ぼしています。大気エアロゾルには、海面や土壌から放出される海塩粒子や土壌粒子、燃焼中に生成するススや有機物粒子、胞子や花粉など、粒子として直接放出されるものに加え、化石燃料燃焼や火山から放出された二酸化硫黄や、植物や人間活動から放出された気体の有機化合物が大気中での化学反応を経て、粒子化し生成するものがあります。

 私たちは、「大気中の微量気体やエアロゾル粒子の動態(生成・輸送・変質・除去過程)や、物理/化学/光学的な特性を調べることで、人間活動や自然活動が、気候変動や大気汚染、健康に及ぼす影響について理解を深め、よりよい環境の実現に寄与すること」を目指しています。

Observation of PM2.5 Using Compact Sensors

  • パナソニック(株)と共同開発した小型PM2.5計測装置を用いた観測を開始しています。粒子1個1個の光散乱強度から、粒子の大きさと数を求め、PM2.5重量濃度を得ています。今後、多地点での観測を行うことで、PM2.5の発生源や大気中での動態について明らかにしていきたいと考えています。

  • また、携帯型のPM2.5計測器を用いて、個々人のPM2.5曝露量を測定することで、PM2.5の健康への影響についても調べていきたいと考えています。

Laboratory and Observational Studies of Aerosol Properties

  • エアロゾル粒子は太陽光を吸収もしくは散乱することにより、地球大気を加熱もしくは冷却し、エアロゾルの気候や環境に影響を及ぼしています。これらの影響は、粒子の光学特性によって大きく異なります。例えば、二酸化硫黄から生成する硫酸や硫酸塩エアロゾルは太陽光を吸収せずに宇宙空間へ散乱することで大気を冷却します。一方、黒色のスス粒子は太陽光を効率よく吸収し大気を加熱します。しかし、有機物のエアロゾルについては、光学特性がこれまでよくわかっていません。そこで私たちは室内実験や実際の大気観測を通じて、様々なエアロゾルの光学特性を詳しく調べています。従来の研究手法では、大気中の粒子をろ紙に集めて分析するなど、実際の大気中の様子とは異なる状態で調べていました。私たちは、新しいレーザー分光法を用いることで、粒子が浮遊した状態でリアルタイムに測定しています。

  • 従来、揮発性有機化合物(VOC)の酸化反応により生成する二次有機エアロゾル(SOA)は光吸収性を持たないとされていました。私たちの研究で、人為起源のトルエンが大気汚染物質である窒素酸化物の存在下で酸化されるときに生成する粒子や、植物起源のイソプレンが二酸化硫黄の存在下で酸化されるときに生成する粒子は、紫外や短波長可視に光吸収性を持つことがわかりました。また、都市や森林、アジア大陸から日本に輸送された大気など様々なところにあるエアロゾルについて現場で調べています。これらの研究により、大気エアロゾルの光学特性の決定要因の理解とともに、エアロゾルが気候や環境変動に及ぼす影響の解明を目指しています。

Observational Studies of Aerosol Formation Processes

  • 揮発性有機化合物(VOC)が大気中で酸化されることで生成する二次有機エアロゾル(SOA)は、主要な大気エアロゾル粒子であり、気候や環境システムに大きな影響を及ぼしていると考えられていますが、実大気環境下におけるSOAの生成メカニズムについては未解明な点が多いのが現状です。そこで、室内実験と実大気観測のギャップを埋める新たなアプローチとして、実大気に高濃度のオゾンを添加して、容器内で反応させた際の二次粒子生成量について調べています。

  • 東京近郊の小規模森林内にあり、イソプレンの放出種であるコナラなどの落葉広葉樹が多く生育している東京農工大学のフィールドミュージアム多摩丘陵で夏季に観測を実施しました。その結果、高濃度オゾンを添加し反応させるとエアロゾルの重量濃度が平均17%増加し、特に、イソプレン濃度が高く、NOx濃度が低い日の昼間に二次粒子生成量が大きいことがわかりました。同時に計測した微量気体成分およびエアロゾル成分の濃度を初期値としたボックスモデル計算の結果と比較したところ、モデルは、観測結果の40%程度しか二次粒子生成量を説明できず、特にイソプレンや含酸素VOCの濃度が高くなる昼間に、モデル計算で考慮されていない未知のSOA生成過程が存在する可能性が示唆されました。

Collaborators

In Japan

  • Nagoya University, Institute for Space-Earth Environmental Research (名古屋大学 宇宙地球環境研究所)

  • Nagoya University, Graduate School of Environmental Studies (名古屋大学 大学院環境学研究科)

  • National Institute for Environmental Studies (NIES) (国立環境研究所)

  • ​Kyoto University,  Graduate School of Human and Environmental Studies (京都大学 大学院人間・環境学研究科)

  • Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology (JAMSTEC) (海洋研究開発機構)

  • University of the Ryukyus, Faculty of Science (琉球大学 理学部)

  • ​Research Institute for Humanity and Nature (RIHN) (総合地球環境学研究所) 

  • Osaka Prefecture University, Graduate School of Engineering (大阪府立大学 大学院工学研究科)

  • Nagasaki Prefectural Institute for Environmental Research and Public Health (長崎県環境保健研究センター)

  • Nagoya City Institute for Environmental Sciences (名古屋市環境科学調査センター)

etc.

Other Countries

  • ​Hanoi University of Science and Technology (HUST) (ベトナム・ハノイ理工科大学)

  • University of Delhi (インド・デリー大学)

  • Seoul National University (韓国・ソウル国立大学)

etc.

Companies

  • Panasonic Corporation, Life Solutions Company (パナソニック株式会社 ライフソリューションズ社)

etc.

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